野田政権の行方

野田政権が9月2日に発足した。なぜ野田首相か、というと、民主党の代表選で勝ったからであり、なぜ、代表選があったか、というと、菅首相が退陣したからである。野田政権誕生は、菅退陣と表裏一体である。

では、菅首相が、官僚やマスコミの支持がありながら、なぜ退陣したのだろうか? 菅本人は、やる気満々で、のらりくらりと居座るつもりだったのに? おそらく、オバマ政権の意向であろう。

菅首相は、親米路線をとってきたように見えるが、実は、親米路線、というよりも、親共和党路線であった。これは、円安誘導発言や消費税増税路線、さらには米軍基地問題への対処からも明らかである。

というのは、これらの発言は共和党の基本政策である、軍事利権と金融資本の擁護を意味するからである。

オバマ政権の政策の基本は、次の二つだ。第一は「反金融資本−親製造業」である。これまで、金融資本と闘ってきたが、8月の共和党ティーパーティーとの戦いで勝利を収め、有利のうちに戦いを続けて

いる。先日も、Bank of America などの金融資本にたいして2000億ドルに上る請求訴訟などを始めている。今後も、金融資本の投機的な動きを封じるとともに、金融資本から金を吸い上げるつもりだろう。

政策の基本の第二は「軍事予算削減」だが、軍隊を海外に展開しても、それに見合う収益(利権)の獲得ができないからだ。これは反ペンタゴンに直結している。

野田首相オバマの意向で誕生したとすると、当然、上のことが前提となる。そして、経済政策としては、円高誘導、そして、円高に対応した産業構造の変更であろう。具体的には、円安によって肥大化した自動車などの輸出産業の縮小と内需の振興ということになる。

ここで重要なのは後者の「内需の振興」であろう。震災復興も、中小企業の育成も、この路線から重点的に行われることになろう。

このような経済政策の下で、野田政権の閣僚を見ると非常に面白い。というのは、親小沢(マニフェスト遵守)路線をとっており、かつ、菅支持派を、問題多発(詰め腹用)ポスト(財務、法務、外務など)に張り付けているからである。

とりあえず、目に見える国内政策を挙げるとすると、増税(これは内需を減らす)ではなく、国債増発による財源調達だろう。予算編成も、内需振興に沿って、中小企業支援とともに、子ども手当が当初計画のようになるものと思われる。また、政策によって、親共和党的な組織(マスコミや官僚組織など)も、大きな影響を受けることだろう。

対外政策については、中国(韓国もだが)の輸出主導型の経済構造が大打撃を受け、日本周辺で地域紛争が多発するものと思われることから、集団的自衛権(自衛隊よりは海上保安庁か?)の行使が前面に出てくることになろう。

おそらく解散総選挙は、2年後まで無い。次の選挙までに、世界は大きく変わり、ユーロの崩壊、中国の内乱(あるいは東南アジア侵略)などで、大きく変わっていることだろう。この政権がどのようにこの状況を乗り越えていくか、なかなか興味深いものがある。

ひょっとすると、オバマは、在日米軍の撤退まで視野にいれているかもしれない。日本から撤退し、スキをつくって、中国がはじけるのを誘導する、という戦略もあり得るからである。

さてさて、どうなることやら。