自転車通勤はエコじゃない

エコとは、環境とサイフに優しいことだそうである。

通勤・通学をバスから自転車に切り替えてエコ気分に浸っている人がいる。しかし、これはエコではない。切り替えた人にとっては、金銭的な意味で節約になっている。しかし、環境については、負荷が増えているからである。

例として、自宅から最寄駅までをバス通勤している人を考えてみよう。片道200円、往復で400円、1か月(20日)で8千円の出費である。この人が自転車通勤にすると、自転車代(ママチャリ)が1万円、駅前の駐輪場が1カ月3000円として、2ヶ月で元がとれる。3か月目からは5千円が浮くことになるから、確かに、この人にとって自転車通勤は「サイフに優しい」ものになっている。

しかし、自転車通勤によってバスが節約できるエネルギーはどれくらいだろうか。バスの乗客が一人減ることによって、燃料代は、ごくわずかであるが、節約できるだろう。しかし、その一方、自転車が1台増えることによって燃料代は増加する。自転車が道の脇をフラフラと進んでいればバスはブレーキをかけてスピードを落とし、脇を通って追い越し、加速しなければならないからである。

どちらの効果が大きいかというと、おそらく、後者の効果の方が大きいのではないだろうか。とすると、自転車通勤によって排気ガスの排出は増えることになってしまうのである。これはエコではない。

エコという問題は個人の心がけの問題ではない。上の例では、多くの人がバスを利用しているときに、一人だけ自転車通勤をしてもエコにはならない。

では、「多くの人がエコに目覚め、自転車通勤・通学をする」ということになれば良いのか、というと、そうではない。というのは、皆が自転車を使うようになると、バス会社が路線の運行を廃止するからである。

バスという公共交通システムが無くなれば、社会的弱者(自転車に乗れない年寄りなど)のために、別のシステムを考えなければならない。そして、その一人当りのコストは、おそらく、人々が自転車通勤・通学によって節約したバス代よりも高いモノにつくだろう。

例えば、一家にサラリーマンと年寄りがいて、サラリーマンが自転車通勤をしてバス代を月に5千円浮かせても、年寄りの病院通いのためのタクシー代が月に1万円かかったら、赤字になってしまうのである!

エコというのも、なかなか難しいものだ。